さくら
ごめん
おれ
会社
クビになった
とたいしは言った
ごめん
守れないかも
さくらと
はな
のことを
ごめん
とたいしは声になっているか
なっていないかわからないくらいの
声量で言った
うん
大丈夫
泣かないで
はな
起きちゃうよ
とさくらはたいしの言葉の間を
縫って言った
ごめん
おれ
頑張ったけど
だめだった
クビだった
とたいしは言った
うん
たいしのせいじゃないよ
とさくらは言った
たいしはさくらが本当のところはどう思っているのか
わからなかった
ごめん
おれ
どうしても打ちたくなかった
二人にも
打たせたくない
とたいし
うん
わかってるよ
たいしの言ってること
わたしわかってるよ
とさくら
ごめん
まさか
クビになるなんて
これから
はな
小学生になるのに
苦労させちゃうかもしれない
とたいしは言った
たいしはこれが本当にさくらとはなを守ることになっているのか
わからなかった
たいしはさくらに抱きしめてほしいと思った
だから自分からさくらのことを
抱きしめた
おれ
守れないかもしれない
とたいしはさくらの耳元で言った
大丈夫だよ
しっかり守ってるよ
ごめん
ほんとに
ごめん
たいしははなを起こしてしまうかもしれない
と思いながら声を少し出して泣いた
はなは寝ていた
とてもかわいかった
たいしが仕事を失っても
はなはかわいかった
たいしは
今度は
声を出さずに
泣いた
それをさくらは見ていた
起きちゃうよ
とさくらは言って
たいしを
また抱きしめた
たいしは
ごめん
と言って
リビングに移動した
ソファーに座って
さくらを
見れずにいた
涙が出てきた
これからどうしたらいいんだろう
と思った
さくらもそう思っているだろうか
さくらが
たいし
ありがとう
と言った
たいしは少し腹が立ってしまった
だって
たいしは
さくらのことも
はなのことも
守れないかもしれない
これから収入がなくなってしまう
どうしよう
たいしは
うん
とだけ言った
さくらは
たいしの顔を掴んで
自分の方へ向けた
そして
あたしは
たいしがあたしのことを
好きで
あたしとたいしのはなが生まれて
大丈夫
たいしにはあたしとはながいる
と
言った
たいしはさくらを抱きしめた
正直なんだそれと思った
何も言わないほうがいいと思ったから
何か言いたかったけれど
言わなかった
でも少し安心した
そして
はなとセックスをした
忘れるためだったかもしれない
この途方もない不安を
一時だけ
忘れるためだったかもしれない
たいしもさくらも
ただ
忘れて
お互いの体の感度だけを
意識していれば
現実で起こったことが
なかったことになるかもしれない
と思っていたのかもしれない
さくらは感じていた
たいしも感じていた
雰囲気で
中出しをした
どちらかがそう決めたわけでもなく
そうなっていた
セックスが終わった後
二人で手を繋なぎながら
たまにキスをして
休憩をしていたら
はなが起きてきた
ママ~
と
声が聞こえて
さくらは
すぐに服を着た
たいしも服を着た
はながリビングに入ってきた
目を擦っていた
髪は乱れていた
そして
たいしを見たはなは
ぼーっとしながら
パパ~
おかえり~
と言った