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湖水の蟹

二宮 豊

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湖水の深みには
不可思議な岩がある


二本の枝
二本の根
一本の幹
一塊りの瘤
真ん中のウロで
魚卵を
水流から
守っている


どれも
浮き上がる力を失い
砂に落ちた煌めきも
水温に冷え切った梢も
いつの日か
正式に
ここに所属するだろう


思い返せば
あまりに多くが
ここに身を投じてきた


ある岩が
ひさしぶりに
幹と
瘤を繋ぐ
茎を
動かす
見事な
あぶくが
光りながら
天に昇る


それを
あぶくで
返してやる

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