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お金と政治についての詩

田上友也

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友達が古着屋を始めた

俺は開店初日に訪れて

ずっと欲しかったヴィンテージのジーンズを

かなり奮発して買った

俺は月の稼ぎがあまりないから

普段は安物の古着しか買わないけれど

今回は友達が古着屋を始めた初日、第一発目だし

頑張って欲しいし

自分もヴィンテージ物が欲しかったので

銀行に駆け込んで

お金を下ろして

ジーンズを買った

)文書通信交通滞在費百万円(

この話を彼女にしたら

よかったじゃん

ええ金の使い方やな

そでしょ

と俺は返し

彼女の前で

そのヴィンテージジーンズを履いて

ジョジョ的なポーズを連続で取り

惚れ直すなよ

と言った

彼女は笑って

やっぱりター君は面白いね

と言った

)我々はテロには屈しません!(

俺は

彼女に少し申し訳ないと思っている

デートに行っても

俺はほとんどお金がないから

大体は出してもらっているし

いつもありがとうとは言うけれど

それでもどこか

後ろめたい気持ちがあった

自分と友達のための

ヴィンテージジーンズじゃなくて

もっと

ティファニーのネックレスとかを

買って

彼女にプレゼントした方がよかったかな

と思った

)安倍元総理大臣の「国葬」を九月二十七日に東京の日本武道館で行うことを決定いたしました。(

その日の夜

俺たちはセックスをしたかどうか

全然思い出せないけど

多分したと思う

ただ

翌日彼女が月曜日で

仕事で家を出た後に

ポストを見たら

国民年金なんちゃらという手紙が

届いていた

中身を開けてみると

毎月16590円払ってください

という趣旨の手紙と

バーコードがついた紙が

十二枚程度入っていた

俺は

古着屋を始めた友達から

ジーンズを買わなければ

しばらくは払えたのに

と思った

そう思った自分を

とても嫌いになった

)東京電力管内で電力需給が厳しくなる見込みのため引き続き節電のご協力をお願いします。(

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