この企画は古着好きの詩人・田上友也が自分のお気に入りの古着から着想を得たショートショートを綴っていくコーナーです。
「この前さ、買ったじゃん、一緒に古着屋巡りしたときにさ、あのまぁまぁ高かった洋服」
と少し暗い顔でかけるは言う。
「あーこの前のあのアウターね」
と俺はライトに返事する。
「そうそう、それをさ、嫁には隠しておくつもりだったんだけどさ、なんかバレちゃってさ」
とかけるはバツが悪そうに言う。
「お前の奥さん超能力者なんだよ、きっと」
と俺はまたライトに返事をする。
「それでさー、もう一週間くらい口も聞いてくれないんだよ」
とかけるはうなだれる。
「俺言ったじゃん、あれ買うとき、奥さんに確認しなくていいんか?って、それか、奥さんにもなんかプレゼント買っていってやれよって」
とかけるはおそらくそんなことを言ったのは覚えていないだろうなと思いながら俺は言う。
かけるはしばらくうなだれたままだった。
俺はかけるが少し羨ましくなる。俺もそのとき結構高めのアウターを半額になっていたので、思い切って買ったが、俺が気にかけるのはクレジットカードを何回払いにするかということと毎月の支払いのことだけだった。でもかけるが今一番心配しているのは奥さんのことだ。単純にかけるの行いが悪かったから、奥さんは怒っているのだと思うけれど、そんなふうに何かを買って怒られたことは俺にはなかった。
「そしたら、まだ9時だし、深夜にやってる古着屋も都内ならたくさんあるから、奥さんになんかプレゼント買っていってもいいんじゃない?」
「えーでも、嫁は古着とか興味ないし、ちょっと前にもイケてるダメージ感のある服買っていったら、ゴミじゃんって言われたし」
「まぁあれは俺もゴミだと思ったぞ」
「おい」
「うそうそ、カッコ良かったよ」
俺たちは早々に飲み会を終わりにして、いつも行かないようなおしゃれな女性の古着屋を探して入る。でも、お洒落すぎてよくわからないし、店員さんがめちゃくちゃ可愛くて緊張する。ちょっと際どい服を着ているのも相まってさらに緊張する。俺はこれが彼女がいない原因か?と思うけど、もっと根本的な問題のような気がするが、考えてもわからないので、考えるのをやめた。そして、結局いつも行くような雑多に服が置かれた古着屋にたどり着く。
「女子の服ってよくわかんえーよな」
とかける。
「いやパーカーなんだから、女子もくそもないでしょ」
と俺。
かけるはその後素直に奥さんに謝って、今度から買うときには必ず相談をするようにとの義務を言い渡され、仲直りできたらしい。かけるは俺と一緒に古着屋巡りは継続できるけど、今までみたいにその場のノリで買うのは難しくなるかも〜と悔しそうに言っていた。
かけるが奥さんに買っていったパーカーをかけるの奥さんはなんだかんだ部屋着にして着ているらしい。俺はそれからも彼女はできていない。そして、いまだにあのときに買った高かったけど半額になっていたから買ったアウターの支払いを毎月している。
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